肝臓は多くのがんの大きな特徴のひとつが転移を起こすことです。転移とは、がんが元あった場所とは違うところにも移動して増殖することです。元あった場所のがんを原発巣(げんぱつそう)または原発肝臓再発肺再発局所再発吻合部再発その他の再発結腸原発7.0%3.5%5.7%1.8%3.6%直腸原発9.5%2.7%2.6%1.7%4.2%診断時に転移がある場合の場所肝転移肺転移腹膜転移その他の結腸原発11.8%2.2%5.7%1.8%直腸原発9.5%2.7%2.6%1.7%参照:「参照:原発性原発性原発性ダイナミックCT検査で早期濃染、平衡相での早期洗い出しなどの特徴がある背景の肝臓がダイナミックCT検査で腫瘍の縁だけが染まる(リング状背景の肝臓は肝炎やダイナミックCT検査は造影剤を注射した後にタイミングを変えて複数回撮影を行う検査です。ダイナミックCT検査では動脈にしか造影剤が入っていない状態や逆に静脈に造影剤が多く集まった状態での撮影も可能です。原発性対して他にはMRI検査や画像検査で原発性そのときには腫瘍に針を刺したりして腫瘍の一部を取り出して顕微鏡でみる病理検査で診断をします。病理検査では腫瘍の中身を直接観察することができ、しかも1個1個の細胞が見える大きさにまで拡大して観察します。原発性肝臓は少々のがんができた程度では体の表面から触ったりして感じることは難しいですし、痛みなども出にくい臓器です。ではどのようにして手術で治療したあとの通院で新たに現れた肝転移が見つかる手術(肝切除) 抗がん剤治療焼灼療法(ラジオ波焼灼療法)肝動脈注入手術は大まかに言って「手術することでがんをなくすことができ、正常な肝臓も十分に残せる」という場合に適しています。詳しく言うと以下のすべてを満たすことが条件と考えられます。耐術可能原発巣が制御されているか、制御可能肝転移巣を遺残なく切除可能肝外転移がないか、制御可能十分な残肝機能肝臓を切除する手術では、手術後に残る肝臓の機能が非常に重要になります。肝臓は人が生きていく中で発生する老廃物などを部分切除 亜区域切除 区域切除 葉切除それぞれの方法は以下で個別に説明しますが、下に行くに従って肝臓を切り取る範囲が大きくなります。なぜ手術の方法がいくつもあるのでしょうか。がんは見た目より周りに広がっていることがあるので広い範囲で切除をした方が確実性は増します。しかし、そうすると正常な部分も大きくとることになり、手術後の臓器の機能に影響してしまうこともあります。最適な切除範囲とは、がんを十分にとりきりかつ切除する正常な部分はできるだけ小さくすることです。方法がいくつもあるのは、できたがんの大きさに合わせるためです。大きながんでは当然ながら大きな切除範囲が必要ですし、小さながんでは大き切り取る必要はありません。以下ではそれぞれの方法について解説します。肝臓の部分切除は、肝臓は表面上は一つの塊に見えます。しかし血流に着目すると8つの部分(亜区域)に分けることができます。肝臓の中に入り込んでいる門脈が枝分かれして8つの亜区域に分布しています。肝臓にできたがんは血流に乗って肝臓の中で転移する性質がありますが、門脈の流れを大きくさかのぼって別の亜区域にまで転移することはほとんどありません。そのため、門脈を目印として亜区域を単位に肝臓を切り取ると、がんが転移している可能性のある範囲を効率よく切り取ることができると考えられています。肝臓を門脈に沿って8つに分ける分類をクイノー分類(Couinaud分類)といいます。8つの部分を亜区域といいます。亜区域のそれぞれにS1からS8までの番号が振り当てられています。亜区域ごとに切除をする肝切除の方法を亜区域切除といいます。肝臓は門脈を目印として分けられます。クイノー分類は8か所に分ける分類ですが、より大きい単位で4つにわける分類をヒーリー・シュロイの分類といいます。4つの部分を区域といいます。区域は後区域、前区域、内側区域、外側区域に分かれます。区域ごとに切除する肝切除の方法を区域切除といいます。肝臓は大きく左右に分けることができます。左右の境界はカントリー線(Rex-Cantlie線)です。カントリー線は下大静脈と胆嚢を結ぶラインのことです。右の肝臓を右葉、左の肝臓を左葉といいます。肝臓の半分をがんとともに切除する手術の方法を葉切除といいます。以下では以下では主治医から余命を告げられた時に受け止めかたの参考にしてほしいことを説明します。余命を考える前提として、ひとりひとりの余命を正確に言い当てることはできません。主治医が個別に余命を予想しても大きく外れる場合はあります。余命を告げられたとしても数字にとらわれて思い詰める必要はありません。さらに大切なことは、余命を告知されるような状態になったとしても絶望ではないということです。余命を延ばす目的の治療から効果が得られなくなれば、苦痛を和らげ自分らしく生きるための緩和治療が主体になります。日本からの報告ではがんが転移するとどうしてもその後の余命が気にかかると思います。しかし、ここで示した数値はあくまで多くの人を集計した統計データであり、ひとりひとりの状態に正確に当てはまるものではありません。例えば同じ参照:「がんが転移した」と聞くとどうしても余命について考えたくなる気持ちは理解できます。ですが、余命の告知は必ずしも正確ではないことに気を付けてください。余命を告知されたときに考えてほしいことは、月並な言い方になりますが、1日1日を大事に生きることです。まずはご自分の病気の状態をよく知ることが大事です。確かに簡単にできることではありません。臨床医としての経験からも、がんが転移した状況のつらい気持ちは理解できます。特に手術でしかし、そして、少しずつでもいいのでこれからどのように過ごせばいいのか主治医に質問してください。同じことを繰り返し尋ねることになっても遠慮する必要はありません。あらかじめ質問を紙に書いておくと主治医が答えやすいかもしれません。がんと診断されるとつらい状況に陥ります。それは皆同じです。がんに対して魔法のような治療はないのです。がんと向き合うことは簡単ではありませんが、前向きにできることは何かを考えていくことが重要なことです。家族、医療者とあなたを支えてくれる人は大勢います。怖い気持ちを乗り越えるために、まず知ることから始めてみるのがいいと思います。 血中のビリルビンが上昇し、眼球や皮膚が黄色くなることを黄疸といいます。がん患者さんにみられる黄疸の原因はさまざまです。がんによる胆道閉塞ではドレナージを行います。末期に出現した黄疸は対処できないことも多く、余命が短いサインとして知られています。 ③ct検査:大腸癌と周囲の臓器の位置関係、肝転移、肺転移やリンパ節転移の有無を調べます。 ④mri検査:大腸癌と周囲の臓器の位置関係、肝転移やリンパ節転移の有無を調べます。特に直腸癌の周囲への広がりを詳細に調べることに適しています。 2017.11 取材・文:柄川昭彦 大腸がんでは、がん細胞が血液に乗って流れていき、肝臓、肺、脳などに転移を起こすことがあります。大腸がん以外のがんでは、このような遠隔臓器に転移が起きると、完治は困難となりますが、大腸がんの肝転移、肺転移では、適切な治療を受けることにより、完治を目指せる場合があります。治療の基本は、手術で切除できる転移巣は切除することです。手術ができない場合や、手術しても治りきらなかった場合は、全身化学療法の対象となります。その場合でも、薬物治療が進歩したことにより、長い期間元気に生活できるようになってきています。 大腸がんは、肝臓や肺に転移しやすいことが知られています。報告によれば、大腸がんが発見された時点ですでに、肝臓には10.9%、肺には2.4%の割合で転移が起きているといいます。また、手術後の再発として転移が見つかることもあります。この場合、最も多いのが肝臓への転移で7.1%、次は肺への転移で4.8%です。 肝臓や肺への転移は、がん細胞が血液に乗って流れていくことで起こります。このような転移を血行性転移といいます。大腸がんの遠隔転移では、血行性転移のほかに、腹膜にがんが散らばるように転移する腹膜播種があります。腹膜播種は、がんが大腸壁の外側に出てきた場合に、そこからがん細胞が腹腔内に散らばって、腹膜などに生じる転移です。ここでは、血行性転移の治療を中心に解説していきます。 大腸がんが肝臓や肺に転移しやすいのは、大腸で吸収された栄養が、血液によって肝臓に運ばれるため、がん細胞も肝臓に運ばれやすいためです。大腸からの血液が集まって肝臓へと注ぎ込む血管を門脈といい、大腸のがん細胞もこの門脈によってまず肝臓へと運ばれます。 肝臓に流れた血液は、そのすべてが肺に運ばれて、二酸化炭素と酸素のガス交換を行います。そのため、肺への転移も起きやすくなります。 血行性転移として、脳に転移が起きることもあります。肝転移や肺転移に比べると頻度は低いのですが、血流に乗ってがん細胞が脳に運ばれていくことで起こります。ただし、脳に最初の遠隔転移が生じることはなく、肝転移や肺転移が起きた後に起こります。 肝転移でも肺転移でも、血行性転移に対する治療は、手術で切除できるのであれば、手術を行うのが基本です(表)。手術によって、見つかっているがんをすべて取り切ることができれば、完治も期待できます。 ただし、肝転移の場合、どうような転移なら手術が可能なのか、一律の基準はありません。手術に耐えられる体力があり、技術的にがんを取り切ることができ、必要な肝臓の機能を残せる場合に手術が推奨されています。肝臓の機能として正常な肝臓を最低でも30%残すことが必要です。肝臓の容積がそれ以下になると、がんは取り切れても、生命を維持するのが難しくなってしまうからです。 肝転移の切除手術を行った場合の5年生存率は、35~58%とされています。日本のデータでは、3年生存率が54.4%、5年生存率が42.1%となっています。 肝臓の切除手術を行っても、約半数のケースで残った肝臓に再発が起こります。その場合でも、切除が可能であれば手術を行います。肝臓の再切除手術を行った場合の5年生存率は、21~48%と報告されています。2回、3回と手術をして治るケースもあります。 がんが大きい、数が多い、重要な血管に接しているなどの理由で、正常な肝臓を30%以上残せない場合には、手術は行わず、全身化学療法による治療をします。 その場合でも、全身化学療法が非常によく効いて、がんが小さくなったり、数が減ったりして、手術が可能になることがあります。ただし、全身化学療法を行うと肝臓の機能が低下することがあるため、肝臓を40%以上残せることが条件となります。手術前に化学療法を行うと、がんが小さくなったり、数が減ったりするのに加え、目に見えない微小ながんをたたいておくという効果も期待できます。 大腸がんの肝転移に対しては、熱凝固療法や肝動注療法といった治療が行われることがあります。 熱凝固療法としてよく行われているのは、ラジオ波焼灼療法です。体の外から肝臓の転移巣に針を刺し、針先端の電極から発信するラジオ波で周囲を高温にし、がんを死滅させる治療です。治療できる大きさに限度があり、適しているのはがんが3cm以下の場合です。 熱凝固療法を選択するのは、手術が適さなかったケースです。例えば、がんが小さいにもかかわらず、肝門部にできていたり、胆管に入り込んでいたりして、手術では切除範囲が大きくなってしまう場合です。手術と熱凝固療法を組み合わせた治療を行うこともあります。また、患者さんの全身状態がよくないために手術に耐えられない場合でも、熱凝固療法ならば行えることがあります。 肝動注化学療法は、肝動脈までカテーテルを送り込み、そこから抗がん剤を注入する方法です(図1)。フルオロウラシル(製品名:5-FU)という抗がん剤が使われます。肝転移治療のために抗がん剤を全身投与する場合よりも、はるかに高濃度の抗がん剤を送り込むことができます。また、フルオロウラシルは肝臓で代謝されるため、肝臓から出ていくときには分解されているので、全身的な副作用はほとんど出ません。これも肝動注化学療法のメリットです。 全身化学療法とは異なるため、肺に微小な転移巣があったとしても、肺の転移巣にはまったく効果がありません。そのため、肝転移への効果が認められていても、臨床試験では生存率などの改善にはあまり影響しないため、最近はあまり行われなくなっています。肝臓機能がよくないために全身化学療法が行えないようなケースでは、肝動注化学療法を行い、肝臓の状態の改善を目指すことがあります。 熱凝固療法も肝動注化学療法も、大腸がんの肝転移に対するメインの治療法ではありません。手術が適さない場合に選択する治療法という位置づけです。 肺転移に対する治療選択の考え方も、基本的には肝転移と同じです。切除手術ができるのであれば、手術を選択しますが、手術できるケースは、肝転移の場合ほど多くありません。手術後に起きた肝転移の場合は、約半数で手術が可能ですが、それに対し、手術後に生じた肺転移では、手術できるのは3~4割程度です。 転移は左右両方の肺に起きることがありますが、両方の肺を同時に手術することはできません。そのため、一方の肺の手術を行い、しばらくしてからもう片方の肺を手術します。 どの程度のがんであれば手術が可能なのか、はっきりした基準は決められていませんが、片側の肺に2~3個まで、肺門部から離れた部位なら3~4個までは、手術の対象となります。 肺転移の場合も、手術ですべて切除したとしても、約半数のケースで、残った肺に再び転移が起きてきます。この場合も、切除が可能であれば再手術します。 肺転移に対して手術を行った場合の5年生存率は、30~68%と報告されています。肺転移巣を切除した後の残った肺に再発が起き、さらに再手術した場合の5年生存率は、20~48%です。 手術が困難な場合には全身化学療法が行われます。肝転移の場合と同様、抗がん剤がよく効き、手術が可能になるケースもあります。 脳転移が起きると、がん細胞ができた脳内の部位に応じてさまざまな症状が現れます。頭痛、めまい、しびれ、吐き気や嘔吐、運動麻痺、感覚麻痺などです。肝転移や肺転移がある人に、こういった症状が現れた場合には、すぐに検査する必要があります。 脳転移に対する治療は、手術か放射線療法です。手術が行われるのは、数か月以上の生命予後が期待でき、切除手術によって重大な神経障害をきたさない場合です。 ガンマナイフなどの定位放射線療法が行われることもあります。頭の周囲から放射線を照射し、脳内の転移巣に放射線を集中させる治療法です。1つの転移巣が3cm以下で、数が3~4個以内であれば、ガンマナイフの対象となります。 肝転移、肺転移、脳転移などの血行性転移に対して手術ができないと判断された場合は、全身化学療法が選択されます。手術ができなければ完治は難しいのですが、近年の化学療法の進歩は目覚ましいものがあり、適切な全身化学療法を行うことで、長い期間元気な状態で生活することが可能になっています。 全身化学療法は、いくつかの薬剤を併用する治療(多剤併用療法)です。薬剤の選択肢も多いため一見複雑に見えますが、基本はシンプルです(図2)。 まず、フルオロウラシルは、基本的にすべての併用療法に使用します。そして、オキサリプラチン(製品名:エルプラット)かイリノテカン(製品名:カンプト/トポテシン)のどちらかを選択します。つまり、「フルオロウラシル+オキサリプラチン」と「フルオロウラシル+イリノテカン」という組み合わせがあるわけです。副作用として、オキサリプラチンでは手足のしびれが問題となり、イリノテカンでは下痢と脱毛が問題となります。 これに分子標的薬を組み合わせます。がん組織の遺伝子検査で「RAS野生型」と判定された場合は抗EGFR抗体薬であるセツキシマブ(製品名:アービタックス〉かパニツムマブ(製品名:ベクティビックス)、あるいはベバシズマブ(製品名:アバスチン)、「RAS変異型」の場合はベバシズマブを組み合わせます。 これが大腸がんに対する全身化学療法の基本構造です。2次治療以降では、それまでに使用していない薬剤を組み合わせていきます。 推奨される治療法はガイドラインに記載されていますが、実際の治療では、患者さんがどのような生活を希望するかが、治療法を選択するうえで非常に重要です。担当の医師とよく話し合って、治療法を選択していくことが勧められます。プロフィール関連記事リンクがんトピックス© QLife, Inc.
大腸がんの肝転移巣や肺転移巣の基本的な治療は、切除できれば手術。できない場合の全身化学療法とはどのようなものなのかを、東京医科歯科大学名誉教授・特任教授光仁会… 肝臓は多くのがんが転移する臓器です。その中でも大腸がんの肝転移は手術などの治療をすることで余命が延長する可能性があります。ここでは大腸がんの肝転移の手術などについて解説します。 No data so far. 転移しているような状態でも余命は長い. 胃や大腸など、ほかの臓器から転移して発生する、転移性肝癌についてまとめています。 肝臓以外の場所から、癌細胞が血流にのって 転移してきたものが転移性肝癌 と呼ばれるものです。 肝臓で発生する肝臓癌とは異なる性質のもので、治療法や症状も異なります。 大腸がんの転移で2番目に多い肺転移。気管に影響を及ぼすので、せきやたんといった初期症状が出てきます。そのほかの症状や治療法についても解説しています。 小腸腫瘍・腸重積・腸閉塞・吸収不良症候群・クローン病 Copyright© 初期段階は症状なし; 黄疸; 腹部右上に鈍痛; 倦怠感; 肝臓に転移しても初期段階ではほとんど症状が出ず、気づかずに過ごす方も多くいます。自覚症状として代表的なのが黄疸です。